kibidangoで、現在220万円を集めている(2016/4/19時点)木のヘッドホン「Konohazuk H3」。開発したのは、元オーディオメーカーのデザイナーで、独立後はプロダクトデザイナーとして活躍する飯田侑希さん。開発秘話について、ご本人にインタビューしました!

■kibidango
「木のヘッドホンをつくりたい(By Konohazuk)」

 


カジュアルな「木製ヘッドホン」を目指して

オーディオ機器には素材に木を使用したものが多いにも関わらず、木を使ったヘッドホンはあまり見かけません。高級機種で木をボディの一部に使用しているものもありますが、個人的にはもっとカジュアルな木製ヘッドホンがほしいと思っていました。


独立後、オーディーメーカー時代に仕事をしていた木工業者と再会。オーディオ市場の縮小で木工業者の仕事が減りつつある現状を知り、何か一緒にできないかと考え、オリジナルの木製打楽器「カホン」を共同で開発しました。そうして始めたのが、木製打楽器のブランド「beating」(http://beating.jp)です。その頃から、「音と木」をテーマにものづくりをするようになりました。


そして、メーカー時代から抱き続けていた「木製ヘッドホンを作りたい」という想いを実現するため、パートナーとなる木工業者を探し求め、ようやく自身が理想とするヘッドホン「Konohazuk H3」が完成。その完成とともに、2015年4月に合同会社コノハズクを立ち上げました。「コノハズク」は、フクロウの種類の名前。フクロウは森の哲学者とも言われ、森や木について深い知見を持っていることから、この名を付けました。

ブランディングや差別化のための「木」ではない


木と音楽の相性の良さにはメーカー時代から注目していました。科学的に見ても、木が持つ音の反射率や減衰率が音楽に適していると言われています。また、木は熱伝導率が低いため人の体温を奪わず、冷たさを感じさせません。プラスチックや金属には決して再現できない付け心地・触り心地を実現してくれます。

しかし、特にヘッドホンにおいて、木は高級感や高音質の表現として付加価値的に利用されているケースがほとんど。あくまでプラスチック製の筐体をベースに、後から木を加えたような形です。コノハズクでは、そうしたブランディングや差別化のための木ではなく、あくまで「木そのもの」を使うことにこだわり、真に「木のヘッドホン」呼べるものを作りたいと考えました。

大切なのは堅さと粘り。岩手県産の「ブナ」を使用


コノハズクのヘッドホンに使用している木材は、岩手県産のブナです。柔らかい木では良い音がしません。例えば、杉だと柔らかすぎて低音の解像感が失われてしまいます。一方で、バンドの部分は曲げ加工に耐える粘りも必要です。そこで、堅さと粘りを両方持ち合わせた「ブナ」を採用しています。

構想から3年!木にこだわるがゆえに苦労したこと


一番苦労したのは、バンドの部分。成型合板という木板を重ねて曲げる技術は、基本的には決まった形に留めるための技術です。しかし、ヘッドホンのバンドは装着時に動くようにしなければなりません。


しなやかになるように接着剤を変えて穴をあけるなど、とにかく試行錯誤。計5バージョンは作りました。各バージョンで幅やサイズを調整したので、結構な数の失敗を繰り返しています。最終的に、合板の枚数を減らすことで劇的に改善が見られました。枚数を減らすとねじれやすくなる問題があるのですが、これを矯正する方法も発見しました。


次に、耳当ての部分。耳当ては各個人にフィットさせるために、上下左右に動かす必要がありますが、その動きに必要な小さなジョイント部分の設計に非常に苦労しました。木は湿気など気候条件でサイズが変わってしまう素材。その変化を吸収できる仕組みにしなくてはなりませんでした。試行錯誤の上、強度を保ちつつ、万が一壊れたときにも修復可能な設計を実現しています。

木が表現する「鳴り」で、より音楽を楽しんでほしい。


音に関しては、最初からかなり満足いく音を実現できました。

ヘッドホンの音は、大きく2つに別れます。1つは、「原音忠実」なモニターヘッドホンと呼ばれるもの。レコーディングなどの正しい音が必要なシーンで使われます。もう1つは、より音楽を楽しむためのヘッドホン。実際の音に味付けがなされ、「楽しい」「美しい」音を表現するヘッドホンです。

コノハズクは、木の音楽的な鳴りを楽しんでもらうという意味で、後者を目指しています。

プロダクトを支えるパートナー

山越木工房 http://yamakoshimokkoubou.com
ヘッドホンの「バンド」の部分の開発・製造をお願いしています。山越木工房の代表・山越さんはオーディオマニアの中では有名な存在で、オーディオ専門誌「Stereo Sound」の付録を担当されたこともあるほど。この人となら楽しく開発をしていけるだろうと思い、飛び込みでお願いした所、快諾していただきました。

武山木工所 http://takeyamamokkou.jp
ヘッドホンで耳を覆う部分となる「ハウジング」の開発・製造をお願いしています。  コンピュータ制御による切り出し、削りを行うNC加工専門の木工所です。こちらは元々地元企業であるヤマハのピアノをはじめとした楽器づくりからスタートしています。やはり音に縁があるという部分で、お願いしたいと思いました。

アツデン株式会社 http://www.azden.co.jp
ヘッドホンOEMの老舗企業。部品供給と、音のチューニングを依頼しています。
世界の名だたるオーディオメーカー達が、こちらに設計製造を委託しており、業界では大変有名な企業です。

プロフィール

飯田侑希(いいだ ゆうき)
1982年生まれ。静岡県磐田市出身。武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科インダストリアルデザインコース卒業後、パイオニア株式会社入社。コンポやホームシアター、ヘッドホン等のデザインを担当。2010年独立、デザイン事務所「LaLa Lab.」設立。プロダクトデザインを中心に活動する傍ら、木製打楽器のブランド「beating」を立ち上げる。2015年4月に合同会社コノハズクを設立し、木製ヘッドフォン「H3」を発表。http://www.konohazuk.com

■主な受賞歴
2007年 グッドデザイン賞
2008年 iF Product Design Award
2008年 無印良品主催 MUJI Design Award 03 金賞
2012年 グッドデザイン賞
その他受賞多数


さらに、飯田さんは「国内の森林有効活用」にも貢献したいと考えており、ヘッドホン1台につき100円が「一般社団法人more trees」に寄付される仕組みになっています。また、今後はラインナップも増やしていきたいとのこと。

「音楽をもっと楽しみたい人、そしてエコやデザインに関心がある人や、ナチュラルなファッションが好きな人に使ってもらいたい。」と話してくださいました。

kibidangoでのプロジェクトは4月30日まで!既に目標金額は達成しているので、今支援すれば通常販売価格よりもかなりお得な値段で手に入れることができます。お見逃しなく!

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「木のヘッドホンをつくりたい(By Konohazuk)」